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​教育理念

100年先を見据えた研究ができる科学者の育成

上述を成し遂げるために、次の3つの力を身に着ける。

自律秩序:生物および科学的な秩序観を変革し続ける力

自立推譲:自律秩序に基づいた人間関係を築き続ける力

世界観 :自律と自立に基づき社会を変革し続ける力​

​自律秩序

​「秩序複製」と「変革」

私たちは、何に基づいて生きるべきか? この答えのヒントは、生命の根源、DNAにあります [1]。DNAの特徴は、「自己複製」つまり自分と同じ化学構造式の物質を原料から作り出すことができます。さらに、自己複製を「速く」かつ「正確」にできるほど生存能力が高まります。そして、自己複製にある種の「失敗(組み換え)」を組み込むことで、より生存に適したDNAが生まれていきました。この流れは、​舞台をDNAだけでなく、たんぱく質、細胞、動物、機械、情報と多岐に移ってきました。我々が今日勉学に勤しむのも [2]、2000年前に孔子が学習を重要視したのも [3]、すべて生命が志すべきことは、「ある秩序を早く、正確に使いこなすこと」、「環境に合わせて秩序を作り変えること」、「これらを自発的にかつ継続的に行うこと」だからと言えるでしょう。

[1] リチャードドーキンス、「利己的な遺伝子」2018, 紀伊國屋書店

[2] 今井むつみ、「学びとは何か」2016, 岩波新書

[3] 安冨歩、「生きるための論語」2012, 筑摩書房

では、生命の根源である「秩序」とは一体なんでしょうか。それは、ある物事を分けて捉え、その個々の要素の中の規則性を見出すことと言えるでしょう。その最たる例は、「言語」と「数学」です。どちらも最小単位の言葉や数字を定義して、それらを組み合わせてある大きな事柄を表しています。言語や数学は、現実や非現実を共に表現することができますが、それを自然界に制約をつけたのが「物理学[4]」、人間の営みに制約をつけたのが「経済学[5]」と言えるでしょう。エネルギーや金銭の制約が生まれることで、それらを最大化することでより良い技術や社会が実現してきました。

[4] 朝永振一郎、「物理学とは何だろうか」1979岩波新書

[5] 伊賀 泰代、「生産性」2016

しかし、往々にして科学的、経済的に最も有利な選択をすることが、必ずしも最良の選択とは限りません。科学的に重要な発見は、非合理的な実験や偶然からよく発見されます。社会的に重要な技術は、非合理的な組み合わせや競争の中から生み出されます。より広い範囲や時間軸で成立する「大局観」、局所的な非合理と大局的な合理性で成り立つ「超合理性」、これらを総じた「世界観」を見出し、作り出すことに挑戦続ける力こそが、私たちが高等教育で身に着けるべきことだと考えられます。

[6] 楠木 建、「ストーリーとしての競争戦略」2010, 東洋経済新報社

​自立推譲

学習回路に根差した人間関係

 私たちは学習回路の動作によって生まれる秩序や利益を本質的に好むように進歩してきたました。それは自分と他者の人間関係にも及びます。家族、親子、親戚、友人、同僚などコミュニケーションの範囲が広がると、一人では達成できない理解や仕事を成し遂げることができるからです。逆にいうと一人で得られる知識や仕事ではこの世界を生き抜くことができないという歴史の証明を裏付けています。木村先生や岡本先生の著書を読むと、コミュニケーションの質が学生を優等生にも犯罪者にも変える重要な要素であることが分かります。

[1] 木村泰子「みんなの学校が教えてくれたこと」2015, 小学館

[2] 岡本 茂樹、「反省させると犯罪者になります」2013, 新潮社​

学習に基づくコミュニケーションの前提は、各個人が学習の回路を開いていることです。そのうえで、アドラー心理学の「課題の分離」に則って学習の回路を発揮できる距離感を保ち、「交友の関係」に則ってお互いの学習の段階に応じた学習の利益を投資し合う関係を築いていくことになります。

[3] 岸見 一郎、「嫌われる勇気」2013, ダイヤモンド社

研究室では、研究で得られた新しい知識や考え方を共有し合う、実験の工夫を共有し合うなどがこれに当たります。この関係を築く力がやがて、社会で求められるリーダーシップの発揮に繋がります。

 

[4] 伊賀 泰代、「採用基準」2012​​

​世界観

​時空間を超えた学習回路

私たちは、空間、時間、資源など限られた世界に存在しています。世界の変化や競争にさらされていると、目先の好奇心や利益を追いかけていると生存確率が下がることが多くあります。例えば、目の前の算数の勉強をサボると、将来の仕事の選択肢が狭まるような感じです。

では、この世界で生存率を上げるためには、どうすれば良いのでしょうか?歴史学者、地政学者、科学者、政治家、思想家などが様々な叡智を集めて得た結論が「時空を超えた学習回路の発現」です。

私たちは、文字と言語を駆使することで、3000年以上昔の思想家の考え方に触れることができます。私たちは100年後には生存していませんが、子供達や子孫のために、利益を減じてでも仕事に取り組むことができます。このように、生物としての寿命や認識できる時空を超えた範囲での利益や叡智の増加に取り組むことが、競争力に繋がり、生存力に繋がります。一見すると一人で損をしているように感じますが、このような考え方に共鳴する人は必ず存在し、支援してくれたり、共に歩んでくれます。この時空を超えた学習感を共有した関係で結ばれることこそが、最大のコミュニケーションであり、最上の仕事だと言えるのではないでしょうか。

[1] エドワードルトワック エドワードルトワックの戦略論2014

[2] 楠木健、「ストーリーとしての競争戦略」2010

[3] 岸見 一郎、「嫌われる勇気」2013、ダイヤモンド社

[4] 新井和宏「投資は"きれいごと"で成功する」2015、ダイヤモンド社

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