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​教育理念

10年後を見据え毎日「問い」続けられる自然科学者

私たち生物は、食物や燃料を糧として生存しています。より良く生きるために、いかに効率よくエネルギーを生命活動に繋げらかを模索しています。このエネルギー変換を行うために用いるのが、言語、道具、概念といった「秩序」です。「秩序」は「速く」、「正確な」に働くほど私たちに恩恵を与えます。さらに、「従来の秩序」を「新しい秩序」に変えると恩恵が飛躍的に向上します。秩序を習熟し、変革し続けることが、私たちの人生や社会を進歩させます。秩序の習熟と変革は、現在の秩序や問題に対して「より優れた秩序が存在するのでは?」という「問い(仮説)」から生まれます。その問いが深いほど問いを実証したときに優れた秩序が生まれ、個人や社会が進歩します。私たちの研究室では、誰かが立てた問いを実証するための歯車になるのではなく、自身が社会へ向けた「問い」を発せることを最終目的にしています。広く、深く、長く、多くの問いを生み出すために、深い問いを有する先端の研究課題を通じた実践教育の研究の場を提供します。

問いを物理化学で裏付け

​深い問いは、世界を広く、深く知らなければなりません。本研究室では、化学の根源である「物理化学」を深め誰よりも深い「問い」を生み出すことを目指しています。研究室の早期配属では物理化学の生い立ちを振り替えり、物理化学の根源を学習します。具体的には、人間の幼少期の「学び」を振り返り「問い」と「実証」とは何かを学習します。その後、1600年代の「物理観」、1800年代の「化学」、1950年代の「非線形科学」、近代の「量子場理論(量子力学の別の見方)」と段階を経て、「物理化学観」を養います。

​00. 学び  

​私たちは「親や先生など先人の言うことを受け入れること」を学びだと思ってしまいます。しかし、僕たちの幼少期、学ぶという概念すら知らないとき、言語や行動などをどのように学ぶのでしょうか? 幼少期の学びは、まさに「問い」と「実証」の繰り返しです。残念なことに、この学びの回路は、大人になるほど失われてしまいます。それを防ぐためには、「意識的」に学びの回路を使わなければなりません。研究生活でフル活用する重要な概念です。

[1] 今井むつみ、「学びとは何か」2016, 岩波新書

​01.  物理学  

私たちは教科書を勉強していると「論理 = 真実」のようにときとして誤解します。しかし、物理学は、1600年台に「論理 ≠ 真実」という画期的な考え方が生まれ、その結果「物理 = ●●」であるという概念が定着し、今日の自然科学が生まれました。さらには、万物には普遍の法則が存在し、その法則に基づけば万物が再現できるという物理モデルが誕生しました。物理モデルとは、「ある物体(質量)」が、ある瞬間に「どこに(空間)」、「いつ(時間)」いるかを力として記述できれば、物体の運命を表す方法です。私たち、化学者にとっては、物理モデル = 「分子や原子」が「熱力学」や「量子力学」に基づいて万物を説明するのが最終目標となります。

[2] 朝永振一郎、「物理学とは何だろうか」1979岩波新書​

​02.  熱力学  

​古典的な物理モデル(ニュートン力学)では物質を読み解くことができませんでした。なぜなら、ニュートン力学は多体問題があるために物体の数が1-2個が限界なのに対し、物質中の分子は数が膨大だからです。最終的には、個々の分子の運動方程式を解くことをあきらめて、統計処理で分子の平均的な物理モデルを立てることで落ち着きました。この学問を「熱力学」と呼びます。熱力学は、「平衡論」で分子の最終的な状態を記述し、「速度論」でそこに至るまでの過程を記述します。これにより、物質の運命を我々は知ることができるようになりました。熱力学を習得する上で重要なので、熱力学は物理学が力学を扱う学問だったという常識を「ある物理量」を考える学問へと変革したことです。このある物理量は物質科学に留まらず、情報科学、宇宙、素粒子、時間の存在などに通じる重要な概念です。この概念で物質を説明できるようになったとき、物理化学者として自立できたときです。

[3] 平山 令明、「熱力学で理解する化学反応のしくみ―変化に潜む根本原理を知ろう」2008講談社​​

​03.   非線形科学  

熱力学は基本的に「線形」現象を想定しています。線形現象は、何かが何かに比例すること、例えば温度が2倍になったら、分子の運動エネルギーが2倍になるような関係です。しかし、世の中の多くの面白い現象や優れた材料やデバイスは「非線形」現象です。例えば、物質と生命の違い、高分子や液晶のソフトマテリアル、電気回路の共振、素粒子の粒子性と波動性などです。この非線形性は、物理モデルの中の三要素「質量」、「空間」、「時間」の中で「空間」の特殊な取り扱いから生まれます。非線形が理解できるとき、私たちは物質の時空間制御が可能となり、材料科学者として先端の極みに立てるでしょう。

[4] 吉川 研一、「非線形科学: 分子集合体のリズムとかたち」1992岩波新書​

​04.   量子場理論  

非線形性が物質科学のおもしろさを記述できます。しかし、その非線形性は何に由来するのでしょうか?この答えは、誰も分かっていません。この問題を解き明かすために、先端の素粒子や宇宙分野の研究者が様々な実験や理論を構築しています。その中の有力な理論が「量子の場の理論」です。既存の物理モデルは、「ある物体」が、「どこ(空間)」に「いつ(時間)」いるかを考えますが、量子の場の理論は「ある物体」の概念を大きく変えます。この概念が理解できると、量子力学の不可思議さなどが理解することができ、世の中のすべてがある概念で理解できるようになります。​

[5] 吉田 伸夫、「光の場、電子の海」2008新潮社​​

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